愛着に勝るものはない?
先日、仕事である町を訪ねたときの話です。その町は道が入り組んでいて坂道や階段ばかり。駅まではバスで移動する人がほとんどで、スーパーやコンビニも遠い。私が住んでいる町は平坦な土地で徒歩圏に駅がいくつかあるので、そんな私から見るとお世辞にも住みやすい町だとは思えませんでした。びっくりするぐらい長く急な階段を両手に荷物を持って降りていると、向こうからスーパーの袋を抱えたおばあさんが…。お互い中腹で一息ついていたので、挨拶がてら「坂道や階段が多くて大変ですね?」と話かけると、「ここはそういう所だからね~。でもいい所だよ。」と。手すりにしがみついて息を切らしているおばあさんはにこやかにそう答えてくれました。
私たちは、こんなおばあさんの状況を知ると「住みにくいだろう」と勝手に想像してしまいます。そして、良かれと思って生活環境を改善してしまいます。でも本人にとっては、今の環境に愛着があるから住みやすいと感じているのかもしれません。環境が変えられていくことは、愛着が薄れてしまうことでもあります。『愛着に勝るものはない』。自分が好きで使っているものは、デザインや機能がどう優れているかだけで選んでいませんし、より優れたものを提案されてもなかなか変えません。変化に合わせて『愛着』は生まれますが、人それぞれが大切に持っているものなので、仮に自分が理解できなかったとしても尊重すべきだと考えています。
あなたが『愛着』を持っている物事は何かありますか?
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*イラストに登場する人や物は、すべて架空の設定です。内容は偏った見解ですが、物事を考える上で何かひとつでも気になってもらえたら嬉しいです。